けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/05/04(火) 05:44:31

『澪ちゃん・・・泣かないで!』

『澪ー、何泣いてんだよ!』

『澪は泣き虫だよな・・・ほら、いっぱい泣きな』

私はとても泣き虫で、君はいつだって笑ってた
私の前で涙を見せてくれたこと、本気で悲しみを吐き出したこと、あったかな。
楽しいとき、悲しいとき、辛いとき
眉毛を八の字に曲げながらでも、目と口では笑顔を作っていた
君はいつでも

「せんせー!ありがとー!」
「学校違うけど元気でね・・・ありがと・・・ぐすっ・・・」
「打ち上げ6時からね!えっ、なんでこないんだよー!」

卒業式が終わって、教室に戻った私たち
涙をこらえながら笑っている子、涙が止まらない子、
色々な思い出と感情が渦巻く教室、唯とムギは完全に泣いちゃってる。私もどちらかというと後者なんだけど
それ以上に気になることがあって、涙を流す余裕がなかった

前者の代表であるかような、あいつが
みんなが教室に戻って、最後のホームルームを終えたあとに、どこかに飛んでいくように消えてしまった
渡り鳥をそのまま人間にしたようなやつだから、別のクラスに挨拶にでもいったのかと思ったけど
さっき教室に花束を持ってきた梓たちが、それを否定した

「ところで、律先輩が凄い勢いで走りながらどこかに向かっていたんですけど・・・・」

梓に聞いたところによると、その先は3年生の階ではなく、トイレにいく様子でもなかったという
目を押さえながら・・・全力で

その様子を聞いたとき、私は全てを察した。きっとそうだって騒ぎ立てるように、脳の全体が震えるように
足が勝手に動き出した

いつも使っていたみんなの部室

この扉に手をかけるのも、今日が最後になるのかな。
そんなことを思ってためらったとき、中から聞こえるのは

わかってる、あの馬鹿の声

「・・・・澪・・・・か?」

こちらにくぐもった声で問いかけてくるその少女は、どうやら扉にもたれかかっているようだ
このまま開けてたらこっちに倒れてたわけだ。躊躇ってよかった
階段を上るときの足音でばれちゃったのか・・・・お前も流石だな

「んで・・・どうした、澪」

今まで聞いたことの無いような彼女の声
弱くて、そして脆くて 少し風が吹いただけでもボロボロ崩れ落ちてしまいそうだった
だけど、気の利いた対応なんてできない私には、
包み隠さず、正直な気持ちを述べるしかない。今までもそうしてきたんだから

「・・・・みんなの前で泣いてもいいんだぞ?最後ぐらい」

「やだ・・・泣いてなんかないし、ここから出たくない」

*

もう3年近く、前になるのかな。
この音楽室で、訪れることの無いであろう客人を待ち続けた、あの夕暮れ
あのときの根気が、結局かけがえの無い今を作ったのだから
帰宅を持ちかけたときに、律がそれに応じなくてよかったと・・・・今更ながら思う


だけど・・・・もういいんだよ
今待っていても、ここにくる客人は、君の知らない人間じゃない
本音で接して、笑い合って、気持ちをぶつけられる人たちだよ
そんなに力まなくていい、強がらなくていい
君を一番知っている私が言うんだから、きっとそうだよ

この三年間の記憶を、逃がさないよう胸に焼付け・・・もう一度あの言葉を

「・・・・・かえろっか」


涙でびしょ濡れになったかのような声で

「そうだな・・・」

と返してきたのは、5分ほど時間が経った後
その返事が来るまでに聞こえた君の悲しみの音は、私だけにしか知られたくないだろう?
だから・・・胸にしまっておくね

その直後、唯とムギ・・・梓にさわ子先生、あと和と憂ちゃん・・・聞き慣れた声がこちらに向かっていることに気付き
私は警告する
「みんな来たぞ」

君が、本気で最後まで笑顔を貫き通したいと思うなら
最後だけ、この時間の間だけ・・・悲しみをみんなにもぶちまけたいと思うなら

「・・・開けていいか」

どっちでもいいから・・・今はとにかく君の顔を見たいんだ。

「・・・・・どうぞ。」

よし・・・じゃあ、扉開けるぞ。倒れないよう気をつけろよ

*

思い出した・・・・一回だけあったね。君が私の前で泣いたこと

今、目の下に派手に跡を付けた情けない笑顔で、皆の前に飛び出した君を見て思い出した

『りっちゃん・・・泣かないの?』
『泣いたら・・・澪ちゃんも悲しくなっちゃうから・・・・泣かないもん』
『・・・・りっちゃん、一人で泣いちゃ駄目だよ』
『みおちゃん・・・・ごめんっ、ちょっとだけ・・・・・』


ほら・・・・いっぱい泣きな

私にもその言葉を使える日がきたのかな
だけど・・・その言葉をお前にあげるのは、帰ってからにするよ

だから今は笑ってろ。その情けない、いつもの顔で



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