けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

短編88

最終更新:

mioritsu

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だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/04/20(火) 02:42:02
嘔吐描写があるので苦手な人はスルーしてください。





「うっ、ごほっ…うえぇ…」
胃袋を裏返すような嘔吐き。
もう吐き出すものは何もないというのに止まらない嘔吐感。
黄色い胃液まで吐き出した後、ジャーゴポゴポと渦を巻く水を眺めた。
戻してるときってなんで涙も一緒に出てくるんだろう、そんなどうでもいいことを
考えながら流れる水の音をぼうっと聞いていた。
トイレから出ると自販機でミネラルウォーターを購入して屋上へ向かった。
春の屋上は風が強くて肌寒い。
冷たい風を浴びながらフェンスを背もたれにして腰掛ける。
ペットボトルの中身を半分ほど一気に飲み干すと、胃に冷たい液体が流れるのを感じ、
やっとスッキリした気分になれた。
「はぁ…」
さっきよりマシになったとはいえ、気分は晴れない。
いつも真面目に練習に取り組む私が、部活に顔を出さずこんなところでサボっていると知ったら、みんなは驚くだろうか。
「でも部活に行く気にはならないしなあ…」
一人ごちて空を見上げる。
こんなに綺麗ならカメラも持ってくればよかったかな。
流れる雲を見てると、屋上よりずっと高いところの風の早さがよくわかった。
しばらく空を眺めていたが、重い鉄製の扉が開く音で意識ははるか上空から
今いるこの場所へと引き戻される。
あーあ、一人の時間も終了か。
ミネラルウォーターをもう一口飲んで、入ってきた人物を確認する。
ブレザーを風にバタバタなびかせながら近づいてくるその人物は、私と目が合うと少し間の抜けた笑顔を見せた。
「みーお!なにサボってんだよー」
そうして、いつもの調子で私に話しかけるのだ。
「これはサボってるんじゃないの。気分転換だ」
私もいつになく子どもっぽい言い訳を返す。
「そっか、気分転換なら仕方ないな」
彼女はそれを受け入れる。
「じゃ、私も気分転換しよっかな」
そう言って私の隣に腰を下ろした。
私にもたれるようにして座っている彼女の、その両手が、ふいに私の右手を包みこんだ。
「澪、寒くないの?手ぇ冷えてんじゃん」
「寒くない、むしろ気持ちいい」
「そっか」
そう一言返事をして、私の手を放さない。
私も冷えた身体に彼女の体温が心地よかった。


「さて、そろそろ戻るか」
結局二人でぼーっと空を眺めたあと、彼女がそう言って立ち上がる。
「うん」
立ち上がった彼女の影が私を覆い、逆光になって表情はよくわからない。
そのまま影が近づいたかと思うと、ちゅっと音を立てて唇に柔らかいものが触れた。
「さ、澪行こうぜ!」
腕を引っ張られて立ち上がる。
「うん」
彼女の表情はもう後ろを向いててわからない。
でも髪の間からのぞく赤い耳から、なんとなく表情が想像できた。
そうすると自然と私の顔も緩んできて、さっきまでの虚しさもどこへやら。
多分、雲と一緒にあの虚しさも空高く上空の風に流され私から離れていったんだ。

「律!キスした後に言いづらいんだが、さっきトイレで吐いたばっかりだ」




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